ゴジラの敵役を務めたスーツアクターがローカルヒーローに。きっかけは息子の聴覚障害⁉
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ゴジラの敵役を務めたスーツアクターがローカルヒーローに。きっかけは息子の聴覚障害⁉

難聴です―。 小学1年生になった吉田守李君。ピカピカのランドセルカバーには、聴覚障害を表す耳マークが付いています。さらに「肩をたたく」「大きな声で」と、話しかける時の注意点がイラストと共に描かれています。父・和宏さんと、母・理恵さんは、守李君の誕生をきっかけに、コミュニケーションの大切さを再認識。驚きの手法で啓発活動を始めました 。

新一年生が着ける黄色のランドセルカバー。子どもたちから危険を遠ざけるためなのであれば「守李にはこのマークが最も大事。シンプルなきっかけですよ」と和宏さん

コミュニケーション考える契機に

聴覚障害のある人は、後ろからのコミュニケーションが苦手です。歩いている時に後ろから声をかけられたり、自転車のベルを鳴らされたりしても聞こえません。「無視している」と誤解され、追い抜きざまににらまれることもしばしば。

守李君は、胎児の時のウイルス感染で難聴になり、右の聴覚がわずかにある程度です。4月に聾学校幼稚部から町立の小学校に進学。歩いて通学しています。そこで両親がカバーに耳マークを貼り付けました。

補聴器をつけた守李君。授業ではワイヤレスマイクで先生の声を拾いますが「教室内の様子までは分かりません」と理恵さん

和宏さんと理恵さんは「きちんと伝わることが大切」と言います。実は2人とも※スーツアクターという経歴の持ち主で、かつて、ゴジラの敵役を演じたこともあるそう。なので、どう表現してどうコミュニケーションを取るか、自然と考えるのだと言います。

和宏さんは、はじめは耳マークだけを書いていました。「『あれはなんだろう』と考えてほしかった」から。注意点の追加は理恵さんの提案でした。「お友達や地域の人が守李と関わって嫌な気分をしてほしくないんです。実際に話しかけた人が『え?』って不快な顔をしているのを何度も見たので」。

取材日。通学路を親子で手をつないで歩く理恵さん、守李君、和宏さん(左から)
通学時は、後ろから友達が追いかけてくることもしばしば。ランドセルのメッセージは効果的です


伝え方は人それぞれで良い

コミュニケーションについて改めて考えた2人は、2021年から応援ヒーロー「ガンバ李α(リーアルファ)」と応援忍者「ガイ」として活動しています。地域の行事に出向き、会場を盛り上げつつ、障害や病気で手助けが必要な人の目印「ヘルプマーク」を紹介。コロナの影響で減ったヒーローショーを楽しみに子どももたくさん集まります。

ガンバ李の隣で構えるガイ(左)。敵と思いがちですが「人は見掛けによらないことを伝えたい」という意図があります

和宏さんは振り返ります。「私はもともと恥ずかしがり屋なんです。でも、表現はしたかった。仮面を着けるスーツアクターなら何とかなると、35年続けてきました。思うに、表現やコミュニケーションの形は人それぞれで良い。受け入れられる表現の幅が広いと助かる人は多いはず」。助けてと言えない人のためにヘルプマークがもっと認知されれば。そう願って活動してきました。「僕たちが注目されればもっと認知が広がる。最終的には『言われなくても知ってる』と、ガンバ李が消滅する社会が夢ですね」。

胸から引き出されるヘルプマーク
顔が見えなくて怖いと言われたら、ちゅうちょなく仮面も外せるガンバ李。仮装はあくまでもコミュニケーションツールの一つ
ガンバ李の銃からはサポートマークや飲酒運転防止など多彩なカードが飛び出します

「障害=マイナス」ではない

障害はマイナスのことと捉えられがち。しかし、和宏さんと理恵さんにとって守李君は「手話の先生」です。「この子に親として認められたいから、しっかり対話したい。手話が必要なら、子どもでもきちんと向き合って教えてもらう。その姿を見せることが、親として大切だとも思っています」と和宏さんは話します。

学年で手話ができる児童は守李君だけだそう。同級生に手話を教えることもあり、和宏さんも生徒の一人です

守李君の障害は、親子でコミュニケーションを考えるきっかけになりました。ランドセルの耳マークは、聴覚障害者とのコミュニケーションを考えるツールに。そして、ガンバ李が生まれました。「『お父さんはヒーローだ』と思ってくれるように、父として応援ヒーローとして、守李とも社会とも向き合いたいです」。

1年前に守李君用に作ったスーツもすでにサイズアウト。「将来守李が望めばガンバ李のチームに入っても良いかなって」と和宏さんは話します

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