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「見守り」?「見張り」?朝カーテンを開けるじいちゃんのルーティンを例に地域の関わりを考える

久留米市が昨年度「地域福祉啓発ポスター・チラシ」を作りました。訴えたのは「周りの人に意識を向けよう」のメッセージ。しかし、ある大学教授から疑問を投げかけられました。

地域共生社会実現へA3-最終CS6ol

「見てるだけ」に絞って

カーテンが半分開いた窓際にたたずむ人。添えたキャッチコピーは「あ、カーテン 今日も開いたね」。令和2年度に作った地域福祉の啓発ポスター・チラシです。ポスターは市内6000以上の事業所に、チラシは公共施設や関係機関、協力してくれる人たちに配りました。

伝えたいことは一つ。「見てるだけ。それも確かな地域の力」と思ってもらえることです。グッチョにしては、珍しくまじめな書き出しです。

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モデルは御年90歳の浦田二三夫さん。安武町で一人暮らしをしています。校区の地域食堂などにもよく顔を出し、人から何かしてもらったらお返しを欠かさない。軽妙なトークでユーモアにあふれている。近所ではマスコット的存在です。

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令和2年度に開催していた「はじける文化と地域ロマン(はじロマ会)」。ロマンを語り「本音」を出す大切さを感じた場でした。浦田さんは月一回開いていたこの場に毎回参加。生い立ちや地域での付き合いなどについて話しました

浦田さんとの出会いは、同じ年度に開催していたおしゃべりの場でした。そこで浦田さんの日課を知りました。「朝起きたらリビングのカーテンを半分開ける」。それをお向かいさんが見て、毎朝無事を確認します。

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ポスターで使った写真。この窓の正面に向かいの家ののキッチンの窓があり、そこからカーテンが開いているか見てくれています。

ポスターの企画はここから生まれました。地域共生社会の実現で大切なことは「住民同士の支え合い」です。しかし、「地域活動を始める」と思うとハードルが高い。ならば「近所の人や状況に意識を向ける」だけならどうでしょう。例えば、通勤の時にチラ見してカーテンが開いていなかったら。浦田さんのトレードマークとなっているはんてん。思わぬ場所でそのはんてん姿を見かけたら―――。

誰かが早く異変に気づけば、悩んでいる人が、そして命が救われるかもしれません。多くの人の意識の「小さな変化」こそ、支え合いが当たり前になる大きな一歩だと思うんです。

本当に暮らしやすくなるの?

やっとテーマにたどり着きました。先日、数十年にわたって地域福祉を研究している大学教授と話す機会がありました。ポスターを紹介すると、教授から質問を投げかけられました。「目を向ける人が増えると、本当に暮らしやすい街になるの?」。

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チラシ裏面に添えたメッセージ。苦しい人に手が届く社会になるために大切な多くの人の意識の変化を期待して書きました

「見守り」なのか「見張り」なのか。地域に意識を向けることで、困っている人が助かる瞬間はあるはず。一方で、目を向けられる立場からしたらどう感じるのか。教授はそれを言いたかったのでしょう。

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撮影の舞台裏。撮影に同行してくれたのは、はじロマ会の運営メンバーで浦田さんお気に入りの友人。これも大切なつながりの一つです

僕は、意識を向ける人が増えてほしいと思います。しかもゆるやかに。ライフスタイルや価値観の多様化が進んだ結果、地域への無関心が助長され、人の絆を弱めてきたのではと思います。だからといって、昔のムラ社会のような「プライバシーが保たれないこともある」 地域の姿は、今の私たちの暮らしになじむとは思えません。ならば「距離感はほどほど。でも気持ちはくっつく」くらいの、地域の関係性があっても良いのではと思うのです。

そして教授は続けました。「関わりっていうのは程度もの。遠すぎは良くないけど、やりすぎも良くない。そういう議論のきっかけになれば、ポスターを作った意味がある」。皆さんはどう思いますか。

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チラシの裏面にはクロスワードパズルも。少しでも楽しく気に掛けてほしいという思いで、職員が手作りで制作しました

最後に皆さんにお願いです。このチラシを置いてくれるお店や会社などを募集しています。支えグッチョなご連絡をお待ちしています。

ちなみに、「地域福祉って」「はじロマ会って」って思った人のために、ちょうど良いページがあります。こちらもどうぞ!

(担当・フトシ)