ガチャガチャで缶バッジ。遊びながら町の未来を考える
ある日、SNSを見ているとコンビニエンスストアに置かれたカプセルトイの写真が流れてきました。「山本町バッジ」と書かれ、パッケージには同町の名所「浅井の一本桜」の写真。「売り上げは子ども会に寄付」と書かれているものの、誰がどういう経緯で販売しているのか分からない。ここはグッチョの出番と、取材に向かいました。
山本の良さを知ってほしい
「山本校区の山本自治区に住んでいる山本です。出身は宮ノ陣ですが」。仕掛け人は、鉄板のネタを持つ山本裕幸さんです。カプセル自販機でオリジナル缶バッジを販売しています。販売機はセブンイレブン久留米山本町店にあり、1個200円。浅井の一本桜やハゼ並木など同校区内の観光名所の風景と飲食店のロゴなど全6種あります。
山本さんは令和5年度まで自治区の子ども会で会長を務めていました。「校区内の子ども会7団体の役員が集まって、町の未来を語り合ったりしていました」と、取り組みが生まれた背景を振り返ります。「今年の山本小学校の1年生は10数人。今年校区内で生まれた子どもはさらに少ないはず。そうなると、いずれ小学校はなくなるかも。人が減るとコンビニもなくなるかもしれない。そんな町に住もうとか、家を建てようとする人はさらに減ると思うんです」。
平成30年、山本さんは家族で同町に引っ越してきました。勤務している造園会社でいろんな人の庭づくりに携わり、より危機感を強めたと言います。「山本に何とか希望の光を」と語り合う中で、住民自身が町の魅力を宣伝できれば、という考えに至り、「そういう気持ちを持つ住民が増えれば、山本に興味を持つ人も増えるはず」と考えたそう。まずは自分の力でできることを、と考えた手段がバッジの販売でした。
動き始めると協力者が続々
動き出すと、子ども会の現役役員や役員OB、友人が協力をしてくれたそう。「バッジを作る機械や販売機は友人から借りました。企画やデザインをやってくれる仲間もいます。町で唯一のコンビニに置けば多くの人の目に留まるのではないかと、オーナーに相談したら了承してくれて。みんなでワイワイやってますよ」と山本さんは話します。バッジの絵柄になった飲食店から協賛金が入るのかと思いきや、「いやいや、お店のロゴを使わせてもらうだけですよ。試作品を作って見せると割と快くOKしてくれますね。中にはクーポンを付けてくれるお店もあって、定価200円で300円のクーポンが付いているバッジもあります」と笑います。
令和6年4月25日、いよいよ販売開始。「どのくらい売れるのか予想できなかったので、とりあえず50個入れました。人の動きが増えるゴールデンウイークには補充しようと思っていたら、4~5日でほぼ空になって。慌てて作って補充しました」。
最初は「何考えよるとやか?」
6月中旬、耳納市民センターの一室で、第2弾バッジのカプセル入れが行われました。アジサイ寺として有名な千光寺の写真を3種類と新たな3店のロゴを用意しました。
「おー、今度のバッジも良か感じやん」。作業を手伝いに来た友人の堤剛さんは、バッジのアイディアが生まれた瞬間に立ち会った一人です。「山本君とは子ども会で知り合ってね。その時は、みんなで飲みながら山本を元気にできるアイディアを出し合ってたんです。イノシシが出るからジビエで町おこしできんかとかね。そしたら山本君がバッジ作ろうって言い出して。最初はイメージが持てんやったけん『何考えよるとやか?』って思ったけど、実物ができてみると面白いですね」と振り返ります。
「僕は山本の生まれではないので、やはり長くここに住んでいる人に相談しながらやりたいんです。じゃないと不安で」と話す山本さん。これに対して堤さんは「山本に引っ越してきた人は、この町の良さを実感している人がとても多い。私は生まれも育ちも山本。この風景を当たり前に見て暮らしてきたから、魅力を認識できていないところもあるんです。外から来た人に気づかせてもらうことは大切なんですよ」と言います。
せっかくやけん、良いことを
バッジの売り上げは1カ月で1万7千円になりました。「一般的なカプセルトイで月5千円売れたら及第点らしいです」と山本さん。材料代を差し引いた1万円を子ども会に寄付することにしました。「お金を持って行ったら、逆に驚かせてしまって」。それを聞いた堤さんは「子ども会で使える物を買って、寄贈したら良かかもね」とアドバイス。
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この取り組みを山本さんは「そういう遊び」と言います。「課題解決って肩肘張らずに、みんなで遊びながら、せっかくやけん地域や社会に良いことをちょっと入れる。そんな感じかな。これからもいろんな人たちと、町のために遊びたいです」。(担当・フトシ)