精神疾患の経験を生かし、たどり着いたケアは「ただ、一緒に過ごす」。【磯田重行さん】
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精神疾患の経験を生かし、たどり着いたケアは「ただ、一緒に過ごす」。【磯田重行さん】

磯田重行さんは、障害のある人が暮らしや健康、働く力などを回復する場を提供する「リカバリーセンターくるめ」の代表です。目標は「スタッフも利用者も共に元気に自分らしく暮らしていく」こと。普段あまり読書はしないのに、僕に無理やり本を持たされた磯田さんが大切にしている「経験者だからできる支援」にたどり着いた経過を描きました。

統合失調症、引きこもり。経験生かす

最近の普段着は市内のセレクトショップで、革靴のほとんどは福岡市の百貨店で購入する。「靴がよみがえる」と年一回は磨きに出す。学生時代は陸上やラグビーに汗を流し、今も続けるサーフィンに出会ったのは大学生の頃。

そんな磯田重行さんは24歳の時、統合失調症を発症。32歳まで引きこもり状態が続きました。人生で一番きつかったと当時を振り返り、「この経験が今の事業につながっています」とも話します。

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白のセットアップで取材に臨んでくれた磯田さん。昔から服は好きで、「リーバイスの501ばかり履いていた時期もあったね」と笑顔を見せます。最近サーフボードも新調。印象は“ダンディ”そのもの。

磯田さんは、「リカバリーセンターくるめ」の代表。障害のある人が自立した暮らしや仕事ができる力を回復する場所を運営する会社です。同社の職員は16人。その約半数は「ピアスタッフ」として働く精神疾患を経験した当事者です。ピアは仲間という意味で、同じような病気や障害などを経験した人が支援者になります。こうした形に行き着いた理由は、磯田さん自身の回復過程にありました。

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自立訓練や相談支援事業を行う施設「リカバリーセンターくるめ」の玄関で、送迎車から降りた利用者(右)を出迎える磯田さん。毎日10数人が施設を利用しています。ガーデニングや菓子作り、ヨガなど、毎日プログラムが組まれ、それに参加しない人はテレビを見たりゲームを楽しんだりと、それぞれの時間を過ごしているそう(写真の一部を加工しています)

「病気を発症してから、外出は精神科のデイケアに通う程度でした。アルバイトをしてもなかなか続かない。しかし32歳で出会った一つの求人で状況が変わりました」。それは、障害者地域生活支援センター「ピアくるめ」が出したピアスタッフの募集でした。

「当時、ピアスタッフは全国的にも珍しく、業務は確立されていませんでした。同時に4人採用されましたが、当の私たちもどのように仕事をしたら良いのか戸惑っていました」。ある日、施設長が言った「何か集まりを催してみたら」というアドバイスで、磯田さんは「引きこもりの人の集い」を思い立ちます。

「引きこもりという言葉が一般的になり始めた頃でした。『一人も集まらないんじゃないか』との声が多かったんですが、意外にもすぐ4~5人集まりました」。その後も口コミで徐々に利用者が増え、親からの相談対応や家庭訪問も開始。受診や支援につながるケースも生まれ、「引きこもっていても交流を求めている。悩みを話せる場や関係が必要だと感じました」。

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当時まとめた資料などを振り返りながら取材に応じる磯田さん

この時期に得た価値観が活動の礎に

この集いで、磯田さんは何かをするわけではなく、利用者と一緒に食事をしたりジュースを飲んだりと、とにかく同じ時間を過ごしました。当時、磯田さんはまだ十分に回復していませんでしたが、利用者と接するうちに、徐々に改善していったと言います。

「働き始めてしばらくは体力も気力も十分でなく、1日働いたら2日休むという感じでした。でも5年ほど経つとフルタイムで働けるまでに。ピアサポートは支援者にとっても、返ってくるものが多いということを実感しました」。

利用者との懇談

車座になってだんらん。「目指すのはスタッフも利用者も、共に学び、成長すること」。ピアサポートの経験が現在の支援に生きています

ただ一緒に居る。いろんな施設や組織で支援について学んできた磯田さんにとって、ピアくるめで得たこの価値観が活動の礎になっています。「同じ立場に立つことが大事。うちは食事もみんなで食べます。同じ経験をしたから、悩みの渦中にある利用者にきちんと寄り添える。その関係の中でスタッフも回復し、共に幸せになっていけるんです」。

与える・与えられるという構図にはない「回復の循環」。つらかった経験を糧に「誰もが自分の力を信じ、元気で自分らしく生きる」という信念で磯田さんが歩んできた証なのでしょう。
(担当・フトシ)

桜の居室

令和2年には2カ所目の拠点「リカバリースペース桜」を開所。就労訓練を行うこの施設には毎日10~15人が通っています


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