ハロウィーンに世代間交流。看護学生が人に会い、場に触れて、気づいたこと。
令和4年10月、住宅型有料老人ホーム「こがケアアベニュー宮ノ陣」を中心に、ハロウィーンイベントが行われました。 「ハローウィンウィンプロジェクト」と題し、市内4団体の子どもたちへお菓子をプレゼント。入居者の寄付で購入し、古賀国際看護学院の学生が配達しました。子どもたちの様子を動画で撮影。高齢者の元へ届けると、大喜びの姿に入所の皆さんも思わず笑顔。同ホームの末次輝さんは「みんなが笑顔になる方法を企画しました」と言います。
高齢者が底力発揮
集まった48,760円で購入したお菓子を、入居者と学生で袋詰めする予定・・・でした。29日、16時30分。集合時間に学生が作業場に着くと、詰め終わったお菓子の袋がずらり。
実は、待ちきれなかったおばあちゃんたちが1時間も早く作業を始めていたのです。その日のミッション完了に、20人の学生が立ち尽くす光景が目に浮かびます。
翌日からの配達は学生が主役。ひとり親家庭が中心となったコミュニティ「じじっか」や、生活が苦しい世帯の子どもたちに向け無料塾を開く「わたしと僕の夢」など4団体に、7人の学生が手分けして届けました。
31日、障害のある未就学児が通う「出会いの場Leo(レオ)」を4人の学生が訪問。お面や帽子で仮装した姿に、子どもたちは大興奮。お菓子の袋を嬉しそうにのぞき込んでいました。「子どもたちが『また来てね!』って全力で手を振り、屈託のない笑顔を向けてくれる。後日、ホームのロビーで流れている当日の映像に見入る入居者さんの姿も。全てがうれしい瞬間でした」と末次さん。学生も顔をほころばせました。
学生が社会課題に触れる
「高齢者は役割を得て、子どもたちに喜びがもたらされる。そして、看護学生にとっては貴重な体験の場にできる」と、末次さんは企画の狙いを話します。
同看護学校のカリキュラムには、地域でのボランティア活動が組み込まれ、以前から同ホームで学生が活動していました。「世代間交流で人の素の部分が見えてくる。さらに今年は、いろんな団体に出向き、地域にある社会課題に触れてほしかった」と末次さん。背景には学生に見られる「生活体験の乏しさ」だと言います。「高齢者と一緒に暮らしたことがないとか、親戚付き合いが少ないという学生が増えています。その上この2年間、人との接触を制約されてきました。幅広い価値観や常識に触れにくかったと思うんです」。
もっと早く出会いたかった
狙いは的中でした。じじっかに届けた田本佳乃子さんは「社会課題への認識が一変した」そう。「最初は『こんなにたくさんの子どもが居るのか』と驚きました。でも時間が経つにつれてその気持ちが薄れました。なぜなら、どこにでもある保育園などと何ら変わらなかったから。『貧困』『ひとり親』という言葉に抱いていたイメージが覆りました」。
さらに、じじっかの「互いに助け合う姿」に触れ、病院実習で聞いた話とつながったと田本さんは話します。「退院した患者さんが服薬や生活習慣の管理ができず、再発してしまうという課題を知りました。じじっかのような関係性が暮らしの中にあれば」と、助け合いの必要性を実感しました。
出会いの場Leoを訪問した小野愛莉さんは「最終的に何も意識しなくなった。それがうれしかった」。訪れる前はいわゆる「施設」的な場を想像し、少し緊張していた小野さんですが、「行ってみるとおうちみたいな場で、みんなが家族のような雰囲気。障害が特別視されていない」と感じ、いつの間にかその場を楽しんでいたそうです。
「あと、私の境遇も関係あるのかもしれません」。小野さんは続けました。「私はひとり親家庭で育ちました。こういうことって他人に言えない人は多い。特別視せず『普通に』接してくれる場があればきっと違う。ここはそういう場。もっと早く出会いたかったです」。
(担当:フトシ)