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当事者が向き合う。貧困からの脱出にこそ大切な「心のデザイン」@じじっか

「実家より実家。じじっか」。なんかユニークなフレーズ。
福岡県久留米市で、ひとり親家庭や生活が苦しい世帯を中心に「貧困家庭の脱出」「地域子育ての実現」を目指す団体の拠点です。じじっかの取り組みの随所に「心をデザインする」という視点が光っています。

まずは、じじっかの紹介から。

さて、このリンクと重なる部分もありますが、いよいよ本題の記事にはいりますね。

血縁なき大家族が暮らし合う

「めちゃくちゃ深刻な場面に出くわしますよ。『今から手首を切る!』って電話があって駆け付けたこともあるし、『子どもが暴れて手が付けられない』というので急いで家に行き、ドアを開けたら血まみれの母親と鉢合わせたこともあります。暮らしの裏側に踏み込んでいるから、たった一食のご飯で、助かっている命がたくさんあることを実感できました」。

じじっかの運営メンバーによるミーティング。深刻な状況に向き合うメンバーは底抜けに明るい。真剣ながらも常に笑いにあふれています

ここは「じじっか」。「実家より実家」という意味を込めた名前で、ひとり親家庭の市民団体から発足した「一般社団法人umau.(ウマウ)」が運営しています。冒頭の話をした理事の中村路子さんによると、目標は二つ。貧困の根本原因を追究・解消する「100人の貧困世帯の脱出」と、地域子育てを実現する「ひとり親ふたり親ではなく7人親へ」です。主な活動は親子食堂や居場所づくり。新型コロナの流行拡大を受けて食事の配達も始めました。さまざまな理由で生活が苦しい家庭など約160世帯が、じじっかを通じて支え合いながら暮らしています。

運営ミーティング中も隣で子どもたちがご飯を食べる風景がじじっかの日常。運営スタッフも大家族の一員。子どもたちには一気にたくさんの親と兄弟ができます。コロナ禍で大人数が集まることが難しい時期には人数を制限するなど、さまざまな工夫で乗り切りました
金曜と土曜に用意する「じじっかご飯」。一回に炊くお米は約5升。家庭用キッチンでは手狭で、業務用コンロの導入を検討中です

血縁の無い大家族「じじっか族」になるには、家族としての婚姻届け「ファミ婚届け」を提出します。じじっか族は全員が何らかの役割を担います。遊びに来て、子どもたちの遊び相手や世話をするのも役割。月1回配達や片付けなどを手伝う人もいれば、運営スポンサーとして寄付金を出す人など、それぞれに運営を支えます。そして、あいさつには独自のルールが。来た時には「おかえり」と迎え、自宅に帰る時は「いってらっしゃい」と送り出します。

新型コロナ感染拡大を受け、じじっかご飯も宅配に切り替えた時期も。運営メンバーが手分けをして希望者宅へ配達しています
じじっかで勉強する子どもたち。互いに教え合ったりする姿が見られます

「苦しさ、痛みが分かるから」

運営の中心となる21人のメンバーには、昼も夜も関係なく電話が入り、いろんな対応を迫られます。中村さんは次のように話します。
「じじっか族の一人から、今晩子どもに食べさせるものが何も無いと連絡があって、すぐに届けました。その時はお金が無くて本当に苦しいんだろうけど、数日前には高級パンを食べたり友達と遊びに行ってたり。貧困の背景にはもちろん手放しで同情できないこともあります。でも、誰だっておいしい物は食べたい。『生活に困っているのに』と否定してしまうと、その人は関係を閉ざしてしまうだけ。そこに向き合うしかない」。

食事や食材を配達する運営スタッフ。80超の世帯に配達する中で、世間話から近況を聞きます

中村さんはこう続けます。「貧困の根本には孤立があります。周りから見ても何が原因なのか、何が事実なのか分からないくらい悪循環に陥っている。解決策なんか簡単に見つかりません。そこから抜け出すには『暮らしを細かく分けて、一つ一つを誰かと認識を共にする』ことからかな。だから一緒に生きていく存在が必要です」。

じじっかで多くの大人と接することで、子どもたちはいろんな考え方や価値観に触れられます。子育てを一人で抱え込まないためでもあり、子供たちの可能性を広げるためでもあります。

暮らしを細分化してシェア

この考え方は、暮らしにゆとりを生み出すプログラム「シェアメニュー」に生かされています。食事の用意や習い事の送り迎えなど、家ごとに行っている作業ををじじっか族同士で一緒に済ませたり、使わなくなった洋服や食材をシェアしたりして、出費や手間を減らします。さらに、自分の「得意」を生かして服や装飾品の制作・販売や講座の開講、ちょっとした事務作業の請け負いなどで「月に数万円」の追加収入を得ることもあります。「暮らしの中に数多くある『作業』を細かく分けてシェアすることで、暮らしが好転するきっかけになるはず」と中村さんは戦略を話します。

暮らしに好循環を生むシェアメニュー。メンバーが増えるほど、できることが増えていきます。

随所に光る「心のデザイン」

貧困という現実に向き合い、悪循環を断ち切るのは当事者である私たちだと運営メンバーは捉えています。「ネガティブに捉えられがちなことだからこそ前向きに捉えたい。だから『貧困脱出』ではなく「ラッキーループを巻き起こせ!」が合言葉なんです」と中村さん。じじっかにはそんな『心のデザイン』が随所に見られます。

11月下旬、じじっかに併設されている倉庫を改装して、屋内広場「じじっかパーク」をオープンしました。約380㎡で子どもが走り回るには十分な広さ。一面の壁が鏡張りになっています。パークを使って毎週金・土・日曜のお昼に、いろんなタイプの居場所をつくっています。金曜は思う存分自由に過ごす「ゆったり居場所」、土曜は四つの習い事を体験できる「みんなの習い事」、日曜は地域住民の皆さんと一緒に過ごす「まちの休日」。人とのつながりや学び・体験の機会から「希望」や「可能性」を生み出す場です。

12月11日土曜。この日の習い事は「ダンス」「ハンドメイド」「英会話」「絵画」。2時間の間はどの習い事も自由に移動可能。参加費は食事込みで500円です。写真はつまみ細工に集まる子どもたち
じじっかパークの壁の一区画を黒板塗装。子どもたちが堂々と落書きできる壁ができました
この日のダンス教室はBTSの人気曲の振り付けを覚えました

そして、じじっかパークの一角にはお店のような部屋「ギフトルーム」があります。正面から右にかけて壁には洋服ラックがあって、左側には食品や日用品の陳列。寄付として集まった洋服や食材が並びます。とても貴重な応援でありがたい。

ギフトルームの全景
陳列棚には食品や日用品が並んでいます。

必要な物をもらえればお金は節約できる。時には買う余裕がないかもしれない。だからといって、段ボールの中に雑然と入れられた状態から持ち帰るのと、きれいに陳列されて「店で買い物」するように選ぶのでは全く違います。「ありがたい」に「喜び」が加わると思うのです。底抜けに明るい運営メンバーが大切にしている「みんなの心をデザインする」ということが、このギフトルームに表れています。

ギフトルームに足りないものも。姿見がありません。きっとそのうち、誰かが愛用した鏡がここに据えられていることでしょう。みんなでもっと素敵な場所に。
じじっかの外観。2階左側の白のドアが玄関、階段を上がってすぐの赤いドアがじじっかパークの入口です

(担当・フトシ)


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